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2020/07/17

古川医療福祉設備振興財団第6回研究助成による研究報告書 講評

※敬称略 役職等は研究助成申請時のもの

 

■研究助成金対象者
学校法人薫英学園 大阪人間科学大学 人間科学部 理学療法学科 助手 岡山 裕美
■研究課題名
「理学療法技術の定量的評価に関する基礎的研究」
―基本的理学療法実施中における身体各部位の筋活動と理学療法士経験年数との関係―」

基本的理学療法実施中における身体各部位の筋活動と理学療法経験年数との関係について、筋活動の様相を検討した結果、熟練者と非熟練者の間で有意な差は認められなかったとの結論である。理学療法士自体の体格差や筋力など様々な条件を排除しない限り、正確な結論が言えない。今後は、理学療法士の身体の使い方を定量的に計測するのみでなく、患者、利用者視点で、経験年数における理学療法技術の結果の差異を確認し、標準化するまでに至ればよい研究に繋がると思われる。

 

■研究助成金対象者
新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師 中村 雅俊 様
■研究課題名
「加齢に伴う関節可動域制限のメカニズムの解明と効果的なストレッチング方法の確立」

研究結果は、①関節可動域制限のメカニズムの解明については、背屈角度(最大限耐えるごとが出来る角度まで他動的に背屈していった「その角度」と研究者らが定義)と最大耐性トルク(対象者の「感覚の指標」と研究者らが定義)には有意な正の相関関係が認められた一方、受動的トルク(対象者の「足関節底屈筋腿複合体の硬さの指標」と研究者らが定義)および筋腿移行部の移動量には有意な相関関係は認められなかったとされ、地域在住高齢者(被験者28人)においてではあるが背屈角度には筋の柔軟性よりも対象者の感覚的な変化が関与している事が明らかとなった。
また、②治療法として、スタティック・ストレッチングとホールドリラックス・ストレッチングの2つの方法で行った結果、双方とも関節可動域改善に有効であり、特に前者は対象者の感覚を変化させ有効であるとされた。本研究は、短期間のストレッチング介入効果のため、今後、長期的な介入効果や身体機能などへの影響についての研究に発展していくことを期待したい。

 

■研究助成金対象者
呉工業高等専門学校 建築学分野・助教 宮崎 崇文
■研究課題名
「表情測定に基づく重度要介護度高齢者のための室内インテリアデザインに関する研究
―老人保健施設における室内環境支援の実践―」

観察やアンケートによる従来の手法とは異なり、IT機器によるデータ取得と分析自動化の面白い試みである。映像データから取得した被験者の表情を細かく測定し、施設入居者の潜在的感情を評価する手法に、今回の実験の新しい可能性がある。静止画像やビデオの映像から、8つの表情:[Neutral, Happy, Sad, Angry, Surprised, Scared, Disgusted, Contempt]各々の一分間(約1800回測定)での出現割合を計算し、各表情を数値化・分析して感情を捉えている。今回は、他者からの働きかけとして、通常生活の中にある会話・食事・ゲーム等の刺激と同じ場所(居室)でのインテリアデザイン変更の刺激が、入居者の感情に与える影響を表情[Happy]の出現率を着眼点として読み取ろうと試みている。感情の揺れをどのように読み取るかの試みとして、新しい手法であり、8つの表情の各1分間における出現率を感情変化の分布として捉えるのも、今後の解析手法の充実にヒントを与えるのではないか。実験機会の増加、そして蓄積されたデータの環境評価への応用に期待したい。

 

■研究助成金対象者
新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師 堀田 一樹
■研究課題名
「全身振動刺激による脳血流の変化と認知機能の改善効果」

運動療法が認知機能の向上に寄与するという理論的背景のもと、全身運動刺激(WBV)に着目し従来の運動療法に加えることで認知機能向上に寄与するかについてパイロット研究を行った。対象は健常成人で、スクワットとWBVを組み合わせ、脳酸素化動態と認知機能評価よりWBVの効果を検討した。その結果、WBV負荷は脳酸素化動態で変化は見られたが認知機能評価では差はなかった。今後は対象を高齢者や認知機能障害者に広げた検討が望まれる。

 

■研究助成金対象者
神戸市立西神戸医療センター 臨床工学室・臨床工学技士 藤井 清孝
■研究課題名
「一般的な徘徊感知機器の医療機器への影響に関する研究」

高齢患者の徘徊や離棟を検知するため医療機関では徘徊感知機器が使われているが、徘徊感知機器の発信信号により重要な医療機器である小電力医用テレメータに影響があることが電波環境協議会から指摘されている。本研究では市販されている徘徊感知機器から市場普及率が高く医用テレメータの使用周波数帯域に電磁干渉を発生させる可能性の高い機器を選定し、その機器の発進信号を可視化することにより中心周波数を確認し医用テレメータチャネルを特定できることを示した。本研究成果は、生体情報の監視に重要な医療機器である医用テレメータの誤作動による医療事故を回避するために医療機器でない徘徊感知機器使用による危険性を示しており、機器導入に際しての選定条件として安全使用基準につながると考えられるが、可視化する装置の整備、普及が必要であることも示している。今後、測定対象機種を拡大し、医用テレメータを含む無線環境にある医療機器との徘徊感知機器の電磁ノイズ信号による生体波形への影響度をさらに明確にすることが期待される。

 

■研究助成金対象者
三重大学医学部附属病院 臨床工学部 主任臨床工学技士 松月 正樹
■研究課題名
「医療機関における携帯電話電波環境簡易評価法の提案」

医療機器などに影響を与えずに携帯電話を利用しやすくするために、院内基地局の発信電波が強い(携帯電話端末は弱い電波発信でよい)場所を、携帯電話端末にダウンロードした4種のアプリで簡易に把握した結果は、高価な専門機器と習熟した人を要する従来型の測定との間に高い正の相関を認め有用としている。今後普及が期待されるが、さらに研究を進めて他の電波的障害要件などの確認作業を行い汎用性の高い手法となることを望みたい。

 

■研究助成金対象者
姫路獨協大学 医療保健学部 理学療法学科 専任講師 金﨑 雅史
■研究課題名
「慢性閉鎖性肺疾患患者における骨格筋量に対する血流依存性血管拡張反応の影響の検討」

本研究の発想は慢性閉塞性肺疾患(COPD)に、近年注目されているサルコペニアとの関連でアプローチするものであろう。外来COPD患者における血流依存性血管拡張反応と骨格筋量は独立した因子であることが示唆された、としているがCOPD患者を「外来の」と特定したことを含め、その研究結果の考案プロセスにおいては、先行研究との一致点の確認のみならず、多くの興味深いデータが得られたことが覗え、主題を超えて新たな展望の手がかりとなるものが得られそうである。サルコペニアとの関連においても、新しい視点や次なる課題の拡がりが期待される。本年は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大の中で肺疾患が改めて注目され、重篤な症状を示すものとして、高齢患者、COPD、サルコペニアは重要なキーワードで、研究の進捗がこの分野へ貢献することを期待する。

 

■研究助成金対象者
東北文化学園大学医療福祉学部 助教 鈴木 博人
■研究課題名
「熟練した理学療法士の治療技術を効果的に教授する方法の解明
―ストレッチング・エクササイズに着目して―」

本研究の目的は理学療法士(PT)によるストレッチング技術の定量化と治療技術指導方法の解明である。研究方法は熟練したPTを対象に技術特性を2実験、学習効果的教授方法の1実験である。研究結果は技術特性2実験ではスタティック・ストレッチング(SS)においてPTの技術特性は明示されないものの、バリスティック・ストレッチング(BS)では短時間で律動的に反復運動を繰返すことで伸張反射が促されるとの結論を得た。わが国では高齢患者が多く、腰痛や肩関節痛などに対して、経験値の高いPTによる繊細な力加減による治療は患者満足度も上がると考えられる。施術者の「匙加減」を定量的に測定し、他の人に正確に伝える意欲的研究であり、継続的研究を期待したい。

 

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