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2017/08/01

古川医療福祉設備振興財団第3回研究助成による研究報告書 講評

■ 研究助成金対象者
四條畷学園大学 リハビリテーション学部 理工療法学専攻 講師 青木 修
■ 研究課題名 「脳卒中患者が安定した立ち上がりを達成するためのノイズ付き前庭電気刺激法の開発」

ノイズ付き電気刺激を脳前庭野に与えることによって、脳卒中患者の安定した立ち上がり動作を誘導させる「前庭刺激療法」の開発を目指す実験研究である。
若年健常者及び高齢健常者を対象として、起立動作時に有効性を発揮する刺激波波形と刺激電流量を探りつつ比較検討する方法をとっており、結果的に脳卒中患者への有効性を認めている。
一方視覚その他の影響を、データ的に如何に除去するかを考える上で対応した、脳卒中患者にもアイマスク、イヤーマフを装着させた状況では同一動作での比較は困難であったとしているが、逆にそのことによって健常者に対するよりも、より大きな動揺抑制が得られたのではないかとも考察されている。
研究着想時の期待想定を、結果として確実に得られた優れた研究であると評価したい。

 

■研究助成金対象者
工学院大学 建築学部・教授 山下 哲郎
■研究課題名
「被災者流動シミュレーションによる震災時医療救護所の諸室配置に関する検討」

活動に制限のある災害時医療体制の中で、緊急医療救護所の設営を建築計画的にいかに考えるのか。
災害時の人の動きとそれに対応する医療及び周辺機能の働きにつき、運営方法も含めた提言を行うのは大きな意味を持つ。
外来患者シミユレーションを応用し、小学校校舎に緊急医療救護所を設けた仮想空間内に患者を動かし、外部の機能とともに救護所のあり方を考えられたことは今後の具体的措置に示唆するものが大きいと考える。
患者トリアージから始まり救急車との関係、他の医療機関への移動・搬送への配慮、軽傷及び中等傷患者の早期帰宅など今後の配慮すべき問題点も浮かんでいる。現実の積み重ねにより設定条件を変化させれば、さらに救護活動への対応力強化に資する研究になりうると期待する。

 

■研究助成金対象者
宮城学院女子大学 学芸学部 生活文化デザイン学科 教授 厳 爽
■研究課題名
「児童思春期病棟の空間モデルおよび環境評価に関する研究」

精神医療分野の建築空間に関する学術的研究報告は比較的少なく、そのうち児童思春期ケアに関する報告は皆無といってよい。また昨今の児童の引きこもりやストレスケアは、社会問題化しており、時期を得た研究課題と言える。
さらに、児童思春期の児童期(8歳から10歳)と前思春期、成人患者の行動を、現地調査やヒアリングに基づき、年代別の行動特性を明確にするなど意欲的な研究方法である。
残念ながら、年代別の発達の過程での対人関係や曜日・時間帯ごとの行動特性等を調査分析し、思春期病棟のありかたを考察しているが、具体的な病棟モデルおよび環境評価マニュアルの作成までは至っていない。
しかしながら、思春期病棟の建築空間のありかたに関する指針が皆無という状況のなかで、この研究報告が、建築界のモデル・環境評価の指針にとどまらず、患者や家族、それを取り巻く人々の、児童・思春期精神科医療に対する社会的な理解に寄与することが望まれる。
今後も、継続的な研究に期待したい。

 

■研究助成金対象者
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 建築学域 教授 竹宮 健司
■研究課題名 「欧米の救急医療体制と施設計画手法に関する研究」

研究者が述べている本研究の目的は、日本と米国の救急医療をその運営体制と施設計画の観点から比較することにより、日本の救急医療施設の現状についてその特徴を明らかにし、将来の日本の救急医療施設再編に向けての示唆を得ようとするものである。米国4施設、および日本の北米ER型システム採用の4施設を調査対象施設として取り上げ、各々の施設調査内容記録と平面計画図を紹介している。本報告では米国の救急医療は1986 年に制定されたEMTALA(Emergency Medical Treatment and Labor Act)により救急医療の患者受け入れ困難防止、救急専門医制度の導入、診療従事者の救急部門内完結型の勤務シフト、プライバシー重視などを含む救急診療体制の確立につながったとしている。一方日本では北米ER型システム導入病院であっても上記の救急診療体制には近づいておらず課題を残していると指摘している。背景には現場では解決できない日本の医療供給体制(診療報酬を含む)が影響を与えていることも示唆している。研究報告書の内容は準備調査的な段階の活動であったと考えられるが、施設環境調査としては空間規模の諸元、使用人数や状況など客観的なデータ収集にやや不足しており、定性的な記述で終わっていることが惜しまれる。

 

■研究助成金対象者
学校法人藍野学院 藍野大学 医療保健学部 准教授 山﨑 康祥
■研究課題名
「心臓カテーテル治療に関する補助デバイスの開発」

課題を「環境に依存せずカテーテル等の細径デバイスを容易に、かつ安全に取り扱うためのワイヤ通線冶具などの開発」と示しているように、治療の準備段階でカテーテルに細径のワイヤを円滑に通す冶具の開発であり、その成果はカテーテルなどの器具そのものの安全な取り扱いや準備段階の時間短縮などに大いに期待できると考えられる。
研究はまず製品動向や臨床上の課題の調査から市場性が高いことを確認し、それを踏まえて塩ビ材による4種類の試作品を作成している。それを動物実験で評価するなどして形状を確定し、試作金型から成型加工による試作品を完成させた。その後に成豚を使った実証実験で評価をしている。工学系と臨床系の評価を得るなど、確実に中間評価を重ねて研究を進め、成果を得た。
成豚を使った実証実験における評価においては、評価項目の妥当性、また環境の違いごとや扱う人ごとにその結果を示しておくとわかりやすい。形状に対しても把握のしやすさなどの評価も必要であろう。大変有用な冶具と考えられるものの、研究者も指摘しているように廉価で負担にならないようにしなければ普及は難しいと考えられ、さらに質的改良・評価とともに今後の製品化への検討を期待したい。

 

■研究助成金対象者
東京都市大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 博士後期課程 工学修士 伊藤 朱子
■研究課題名
「特別養護老人ホームの移転改築に伴う建築空間への適応と活動に関する考察」

平成26年度は特別養護老人ホームにおける移転改築に伴う「環境・活動・状態の変化の比較とその要因」を研究課題とし、本年度は「空間・環境への適応」をテーマに新旧施設での入居者・職員の動線調査、アンケート調査、ヒアリング調査、行動観察等により分析されている。
特に新施設で採用されている全室個室従来型ケアについては、プライバシーの確保や感染管理など安心してケアに取り組める環境を作り出すことができる一方、多床室従来型ケアと比べ職員の負担が増える可能性について本研究での分析が計画手法に大きく寄与するものと考えられる。
特に計画手法として、食堂などの共用空間とトイレ・手洗いの適切な配置やプライバシーへの配慮、レイアウトの自由度の高い共用空間、柱で死角をつくらない大スパン、共用空間での入居者の集まるスペースの複数配置など、今後さらに詳細な分析や具体的な提案へのフィードバックとともに、職員動線距離の新旧施設の比較分析や諸室配置計画の見直しによる改善手法の検討についても、今後の福祉施設の計画において有意義な研究として、大いに期待するものである。

 

■研究助成金対象者
兵庫医療大学 リハビリテーション学部 講師 塚越 累
■研究課題名
「変形性膝関節症に対する在宅リハビリテーションシステムの開発」

高齢者の多くが「変形性膝関節症」に悩んでいるところであるが本研究は、その疾患の進行にかかわる要因を特定し、その結果を在宅リハビリテーションシステム(機能訓練方法、動作訓練方法など)に反映させることを最終目標としての3年計画の初年度研究である。
初年度の研究到達点は、同関節症患者の特徴を明らかにするものとしており、それへの到達は確認できた。
変形性膝関節症患者群14名と健常者群20名を被験者として特定し、双方の群に同様の機能測定、検査項目や物理的負荷をかけて比較し、分かりやすい方法での統計的分析を行っており、研究方法としての妥当性は有していると思われた。
変形性膝関節症患者群と健常者群への機能測定から物理的負荷を数値で確認しており、細部の測定値が報告されているが、研究結果の表現方法が、文章だけであるので分りづらい。
表現としては一覧表、グラフなどの利用で第三者が理解しやすいものとすることも必要である。
今年度の結論としては変形性膝関節症患者群と健常者群双方での運動能力の差に特徴があるとされ、それへ至る要因については、次年度以降の研究を待つとしている。
2年目、3年目では被験者数を拡大して、最終目標である在宅リハビリテーションシステムでの効果的な介入方法を見出そうとしている。
今後の研究の進展に期待したいところである。

 

■研究助成金対象者
藤田保健衛生大学 医学部リハビリテーション医学I講座 博士 向野 雅彦
■研究課題名
「歩行中の経皮的磁気刺激が歩行パターンに及ぼす効果の検討および治療的応用」

歩行時に、経皮的に磁気刺激を与え歩行パターンに及ぼす効果を検討し治療に応用するという研究である。しかし着想時の目的と方法が人体に介入させる物理的刺激(磁気刺激)の特性のために、人体に安全な範囲内で制御する技術上の問題によって想定した方法では達成できなかった。また次善として考えられた方法での実験によっては期待に沿う結果が得られなかったという、まことに残念な結果となった。研究方法に検討すべき余地が残されていたというべきであろう。
物理的な刺激は、それを人体に介入させることによって症状を改善し、機能を回復せしめる方法としても、計測や診断を行う手段としても有効、有益に活用されるという長い歴史を有する。刺激の主体を為すエネルギーを如何に取り出し、如何に有効かつ安全に利用するかに重要なポイントがあり、それには医・工両者の連携、協働が重要である。
今回の研究着想と、実験の試行錯誤が、次なる技術的向上に資することを強く期待するものである。

 

■研究助成金対象者
慶應義塾大学医学研究科博士課程 Medical Doctor 里宇 文生
■研究課題名
「義肢使用者のための臨床用動作解析システムの構築」

「義足使用者の動作を解析するためのシステム構築」をし、それを用いた股義足使用者と健常者との動作比較を行うことが今回の目的であった。
両者の違いを比較するには解析症例が1例であることをはじめ、様々な限界を持ちながら、(第32回日本義肢装具学会発表にあるように)股義足歩行で使われる「筋活動」を示唆するデータを得ている。また、平地ではなく傾斜交互上りでの動きについても、両足の関節や筋活動へのデータを得たものと考えられる。
症例数を増やし歩行速度・器具の変化による影響・リハビリ過程の変化等これからの研究課題の細部確認を示唆する一方、大きな研究課題である股義足歩行と健常者歩行の比較研究の一部を構成したと評価できる。

 

■研究助成金対象者
兵庫医療大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 講師 森 明子
■研究課題名
「地域に根ざしたウィメンズヘルスサポートに関する研究 -尿失禁に対する骨盤底筋トレーニング習慣化プログラムの構築-」

対象の尿失禁治療・防止、中でも腹圧性尿失禁については「女性尿失禁診療ガイドライン」において、下部尿路リハビリテーションがまず行うべきものとして挙げられている。その中で骨盤底筋訓練は中心的位置づけである。しかし、この訓練法そのものは人の手を借りず、自ら行わなければならないこと、3カ月は続けることからその持続性が大きな課題である。
本研究はその課題の解決を目指している。
そこで取られたのは尿失禁や訓練の目的などの講義、少人数指導の骨盤底筋訓練、3か月間の定期的フォローアップ、自己行動記録などであり、また一部自らの選択も含めて自己訓練の習慣化を成功させている。特に自己行動については記録することで前回との比較を常に意識し最低レベルの向上につながっていったともいえる。
ただ、骨盤底筋訓練の習慣化には成功したといえるが、これらの要素が必要十分条件であるかの検証は今後求められよう。また研究者も指摘しているが骨盤底筋訓練が最終目的ではなく、尿失禁の頻度低下や特定の行動の時の失禁防止であり、それが生活の質と結びつくことの評価は対象者の選定が課題となろう。習慣化の面の評価においても動機と成功体験を考慮する必要があると思われる。

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