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2023.06.13

研究助成

古川医療福祉設備振興財団第8回研究助成による研究報告書 講評

※敬称略 役職等は研究助成申請時のもの

■研究助成金対象者
市立伊丹病院 医療技術部専門技術担当・主査 臨床工学技士 湊 拓巳 様
■研究課題名
スマートグラスを利活用した医療機器保守管理支援に関する研究

医療のDX化促進に伴いXRの導入による活用が広く展開されている。本研究はAR(拡張現実)の利活用による多種類の医療機器の複雑な取り扱い方法を、グラス型の機材でフィジカル空間に任意の画像を表示し、精度の高い情報を提供することである。XR機器の性能、付帯機器などの使用環境への反映及び影響が高いことは予想されているが、研究結果は現有機種の性能評価から検証された結果のみが提示されている状態で、実験実施の前段階である。しかし、アプリケーションの独自開発もされており、基準化した条件による機種を限定し、主題である検証実験が継続されることが望まれる。本研究により定量化した結果を用いて、臨床工学分野の業務効率や使用者の負担軽減などが実証されることで、AR医療機器の保守管理への応用や遠隔管理環境の整備、拡大業務への汎用性などの実用化が期待される。

■研究助成金対象者
関西医科大学くずは病院 リハビリテーション科 理学療法士 村岡 秀映 様
■研究課題名
人工膝関節置換術後患者におけるトレッドミル上での異なる歩行速度での筋電図学的・運動学的指標の変容  ―歩行速度低下の様相を捉えることを目指して―

本研究は、人工膝関節置換術患者を対象として、複数の歩行速度条件を設定したトレッドミル上での歩行動作における筋電図学的、運動学的特徴の変容を明らかにした研究である。
対象者は30名であるが、単一の施設からの症例であり研究結果としては信頼性のある内容となっている。トレッドミル歩行は、実際の平地歩行との条件の差を認めるが、先行研究などでは、運動学、筋活動はほとんど差がないとの事を確認されており、条件差も問題ないと考える。
人工膝関節置換術患者は、早期退院傾向にあるため、今回の結果内容を踏まえて、自宅での自主練習内容にも応用できると思われる。また、今回は、人工膝関節置換術患者での研究結果ではあるが、歩行練習は、多く疾患患者に行う練習である。今回の結果である、「歩行速度の違いが、筋活動に影響を及ぼすこと」を踏まえ、他の疾患患者にも応用できると考える。
今後、本研究を踏まえ、臨床にどのように応用するのかをさらに研究していただく事を期待したい。

■研究助成金対象者
大阪大学医学部附属病院 臨床工学部 臨床工学技士 村辻 雄大 様
■研究課題名
植込型補助人工心臓機器トレーニングにおける完全遠隔化システムの構築

近年、末期的心不全への心臓移植が進む中で、移植までのブリッジとして長期在宅管理が可能な植込型補助人工心臓(VAD)の応用が進んでいる。実際、年間100例に及ぶ植込みがこの10年間に行われ、かつ待機期間は5年近くの長期に及んでいる。さらに永久使用(Destination Therapy)も開始されている。かかる状況で、VAD機器の管理(対外部分のシステムコントローラーとバッテリ)においてケアギバー(介護者)の役割が在宅管理において重要となっている。一方、介護者の高齢化やケアチームの未整備から患者及び介護者の機器管理教育をどう進めるかが課題である。
村辻氏らの遠隔トレーニングのシステム化は重要な研究であり、特にE-Learning(EL)を用いた遠隔でのトレーニングシステム構築は重要で、本研究のELの成果は今後のこの分野の発展に貢献するものである。3Dプリンターを用いたデバイスのサンプル作成については、遠隔トレーニングにおける意義については検証する必要があると思われる。また、完全遠隔化の安全性の評価が今後なされることを願うものである。

■研究助成金対象者
青森中央学院大学 地域マネジメント研究所 研究員 阿部 光 様
■研究課題名
地方都市における疾患・プログラムに対応した精神科通所施設の治療環境に関する研究

精神科通所施設の治療環境に関する論文で2年継続研究である。初年度は施設形態の資料収集を行い施設数の経年変化や疾患患者割合について実施した。2年目は、調査地域を青森県内22施設選定し平面計画を分析し、内6施設について訪問調査した。結果はプログラムを実施する諸室は続き間型が多く、スタッフ室は出入管理型が多い状況であった。さらに2施設を抽出すると、プログラムの設定により居場所的に利用する(利用者平均年齢58.1歳)か就労目的の通過的に考える(同30.2歳)かなど年齢層や属性に対応したプログラムによる利用方法の違いも明らかにした。また、種類の異なる家具は居場所選択の幅を広げるなどの結果も導き出している。地域共生社会実現に向けて地域へ移行させるべく、このような研究は在宅生活を支援する上で意義がある。精神疾患の多様性を考慮し当該地域の特性など勘案すると、さらなる事例調査分析が必要である。今後の方向として現行制度の改善を含めて在宅に至る住環境のあり方研究への発展が期待される。

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